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Il Gatto di Schroedinger (in Giapponese)
前回のバルの記事を私なりに訳したものを掲載。
CSカナリヤさんの嘆き(?)に少し応えられたら嬉しいな、との想いと、
私も何が書いてあったのか理解してみたいな、という想いとで、
なんとかかんとか完了!
ただし、間違っていることも多いにあり得るので、その点はご指摘歓迎♪

‥‥‥

Il Gatto di Schroedinger

 量子力学は、20世紀の始めに生まれた現代物理学の一分野であり、エネルギーの量子分散に基づいて、私たちを取り巻く自然を記述するものです。この量子力学においては、とても奇妙なことが起こります。それはあまりに奇妙で、アインシュタインを始めとする、当時の有名な科学者たちが受け入れることのできなかった現象です。量子力学とは、どこかしらに欠陥があるに違いない、と考えられていたのです。アインシュタインが「神はサイコロを振らない」と言ったように、因果関係に基づく論理と厳密な説明(=量子力学以前のもの)の替わりに、統計確率や事例にのみ基づいて自然を記述すること(=量子力学)を受け入れるなど不可能だというわけです。

 しかし、時が経つにつれ、量子力学は、科学理論としてとても正確で効果的であることが明らかになってきました。とりわけ、小さなスケールの現象(微視的現象、素粒子スケールの現象)を扱うに際して、今日の誰が量子力学に欠陥があるなどと思うでしょう。ちょっと例に挙げるだけでも、原子力発電所や携帯電話やパソコンなどは、この量子力学論の法則を厳密に応用した技術によるものです。いったい誰が、それらが神が自ら創造したものだ、などと考えるでしょう。

 ここで、量子力学を用いると、いかに信じられないような冗談が可能となるか、について簡単にご紹介しましょう。例えば、不確定性原理によれば、1つの素粒子は同時に2つの異なった場所に存在し得るのです。それは、素粒子そのものを私たちが観察できるか否かとは関係なく、現象そのものの自明性によるというのです。私たちは、その素粒子がここにあるか、あそこにあるか、といった疑問に対して、ある「確率」を言えるに過ぎません。あるいは、その素粒子が「非局在化」、すなわちどこに存在するか特定できない、つまりはどこにでも存在し得る、という事実から、2カ所に同時に存在し得ると考えることもできます。これは、波動に似た現象です(=点として存在するのではなく、波のように広がりある動きとして存在する)。
 もちろん、もし私たちが自分の身体を構成する各素粒子それぞれの非局在化について考えたとして、私たちの素粒子があちらこちらと部屋の中をまさに歩き回るなどと考えるわけにはいかないでしょう。そうした考えは、体外旅行や体外離脱を信じる人たちや超常現象やそれに類する戯言を信じる人たちにとってはホッとする話でしょうけれど。事実、非局在化の現象は、微視的なもの(=素粒子レベル)であり、単一の素粒子それぞれにおいて意味を持つのであって、私たちの身体といったような巨視的なシステム(=物体的レベル)にとっては実際的な意味は失われるものなのです。結局のところ、私たちの素粒子は微視的にはあちらこちらと動き回ると言えるのですが、それは巨視的にはあるべき場所のすぐ傍に常に存在しているのです(身体を構成する素粒子は、微視的に見るなら、ひどく僅かな距離ではあるにしてもそこここを動き回っていて2カ所に同時に存在しうるとさえ言えるが、それは身体という巨視的なシステムの中に留まっている範囲のことである)。その結果、私たちの身体は崩壊せずに済んでいるのです。

 ここで、素粒子と巨視的なものを組み合わせた、思考実験(=実際的ではないので実現可能ではないが、理論的に頭の中で考えることのできる実験)というものを考えてみましょう。素粒子は放射性物質で、巨視的なものは猫とします。この思考実験では、ある一定の時間が経過してα崩壊という現象が生じると、ある確率で放射性物質からα粒子が放出されます。今、50%の確率でα崩壊が生じる、としましょう。この放射性物質(=素粒子)の量がとてつもなく多いとすると、どうでしょう。1時間後、その半分はα崩壊してα粒子を放出し、残り半分はα崩壊せずそのまま残ると仮定されます。
 では、この放射性物質(=素粒子)がたった1つの素粒子だとしたら、どうなるでしょうか。1時間内に50%の確率でα崩壊が生じる、ということは何を意味するのでしょうか。実はこうなると、こうした統計的記述は意味をなさないのです。なぜなら、1時間後、その素粒子はα崩壊するか、しないか、のどちらかでしかないわけです。ところが量子力学では、このような状況にある素粒子は、同時並行的に2つの状態が重なり合っている、と考えるのです。すなわち、α崩壊している状態としていない状態の両方が同時にそこに実在している、と考えます・・・て、あり得ない話ですよね。

Il Gatto di Schroedinger

 さて、猫(生きている)を密閉した箱に入れてみましょう。この箱には仕掛けがあります。箱に仕込まれた放射性物質がα崩壊してα粒子が放出されると、スイッチが入り、ハンマーがフラスコを破壊し、青酸ガスを発生させて、哀れな猫は死んでしまう、というものです。この箱の中で何が起こるかは外側からは見ることができないようになっていて、私たちは、決められた時間(例えば1時間)が経ってからしか、それを開けて見ることはできません。
 では、私たちはこの箱を開けずに、猫の状態について何か言うことはできるでしょうか。この問いに対して、量子力学では、猫は同時に生きている状態であり、また死んでいる状態である、と答えるのです。なぜなら、先に述べたように、箱に仕込まれた放射性物質(=素粒子)は、α崩壊している状態としていない状態の両方が同時にそこに実在している、と考えるからです。
 この考えは明らかに論理と常識に反しています。もし1時間後に箱を開けたなら、実際には、私たちはそこに生きている猫か、死んでいる猫のいずれかを発見するのですから。生きてもいるし、死んでもいる、ということはあり得ないのです。
 この「シュレーディンガーの猫」という思考実験は、量子力学や不確定性原理には欠陥があると考えていたアインシュタインを喜ばせました。この思考実験が、まさにその欠陥を証明すると考えたからです。(ところで、アインシュタインは青酸ガスの替わりに、爆薬を使いたがっていたそうです・・・どうでもいいことですけれどね!)

 しかし、もし量子力学が孕むこのようなパラドックスに対して、決定論的な合理的説明を見つけたいのであれば、私たちはもっと柔軟に考える必要があるでしょう。実は、あまりに容赦のない論理的なものなので、まだ人々が得心したとは言えずにいるのですが、幾つかの説明はあるのです。例えば、1957年にヒュー・エヴェレットは説得力のある解釈(それは"正しい"とは限らないのですが、確かに示唆に富んでおり、魅力的なものです)を提案しています。それは、猫が同時に生きてもいるし死んでもいる、という明らかな矛盾を説明する、平行宇宙論です。
 エヴェレットによれば、猫は一つの宇宙では確かに生きており、別の宇宙では死んでいるのです。そして、この二つの宇宙は、実験前に存在した単一の宇宙が分岐したもので、明らかに、この新たな二つの宇宙は、分岐後には何の接点も互いにないのです。したがって、一つの宇宙では箱を開けると私たちは死んでいる猫を見つけ、もう一つの宇宙では生きている猫を見つけるのです。

 この説明が魅惑的かつ示唆に富むものであるのは、私たちを取り巻く"現実"というものが、あらゆる種類の選択可能性を含んでおり、いずれの可能性も同時に起こりうること、そして、平行宇宙が分岐し続けて、それぞれには独自の異なる展開があること、を私たちが考えることを可能にするからです。

 したがって、"私が米国に行くと決め、私のガールフレンドに出会い、その結果、日本に移り住むことに決めたのは、なんと幸運なことでしょう"という発言は意味をなさないのです。もっと論理的で気の利いた次のような言い方であるべきでしょう。"この一連の幸運な出来事が実際に起きた、まさに固有のこの宇宙に生きているのは、なんと幸運なことでしょう。私は、他の全ての宇宙に生きている(あるいは、そこではもう生きてはいないかもしれない...)、別の私を決して羨ましく思うことはないのです"
 もちろん、私たちは実際のところは分からないのです。もし平行宇宙が存在するとしても、私たちはそれを知ることはできないでしょう。しかし、多様な宇宙の分岐路が、"自由意志"という考え方や、あらかじめ定められた運命なるものの不在を説明していると言えるのではないか、というのはとても示唆に富んだ解釈です。

 そして、私は、この記事の冒頭に掲載した写真の"Baru Cat(バル猫)"をもまた歓迎します。なにしろ、我が家から見下ろせるところに居る、このバル猫は、眠ってはいますが、確かに生きているのですから!
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【2010/11/16】 |  Scienza, Scacchi / 科学, チェス | COMMENT(2) |
コメント

私の嘆きにお応えくださりありがとうございました。日本語にして頂いても何度も読み返しため息ついている状態です。理論的ではないにせよ、あらゆる「思考実験」を日常的にしているなあとふと思う今日この頃です。
【2010/11/21】 URL | CSカナリヤ #- [ 編集]

Re: タイトルなし
CSカナリヤさん

お返事が遅くなりました!
ブログ更新をさぼって、バタバタしていました/います。
師走到来、です。

> 私の嘆きにお応えくださりありがとうございました。
嘆きが嘆きを呼び、なんてことになりかねないですよねー。
私も訳しておきながら、こなれていないのもそうなのですが、
目で見ることのできない、視覚的に表すこともできない、
そういった分子粒子レベルのことを滔々と語っているバルを
目の前にして、「まさに異星人だ」と思ったのでした。
どうやら私がなぜ理解できないか、が分からないようです。
なので、分かるまで説明してくれようとします。
大変です...どちらも♪(笑)

人の頭の中って、どうなっているのやら...
興味とか得意不得意とか、本当に人によって違いますよね。
だからこそ面白いのでしょうね、世の中は。
(と悟ったように言ってみる...♪)
 


【2010/12/05】 URL | バル&私(Ran) #sUqZoKtM [ 編集]


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*Baru= イタリア語部分の書き手。日本在住のイタリア人。北イタリア(ピエモンテ州)出身、南イタリア、ローマ在住を経て、ひょんなことから日本へ。何であれ手間ひまかけて作ることを厭わない星人。チェスと芸術と科学とイタリア/ピエモンテ食文化をこよなく愛し、語り出したら誰にも止められない...!
*Ran = 日本語部分の書き手。日本人。眠りと寛ぎに幸せを感じる怠けもの星人。世の中知らないことだらけ。

Italiano io, originario del Piemonte, ma ho speso piu' di venti anni a Roma. Ora, dopo una breve parentesi americana, vivo in Giappone con la mia adorabile compagna, per una serie di fortunati eventi ;-).
Amo a tal punto l'arte, la cultura, il cibo e la cucina italiana (soprattutto piemontese) che non posso smettere di parlarne (come sostiene la mia compagna). Cosi' qui ne scrivo...
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